パネル展『博物画に見る南海の生きものたち』

皆さんは、昔の魚類図鑑をごらんになったことがありますか。今回の特別展では300年近く前に出般された図鑑のデジタル画像をお貸りして、皆さんにその当時の図鑑におさめられた動物の姿をパネルにしてごらんいただきます。当時の図鑑の魚たちは、現代の図鑑とどうちがうのか、実物と比べるとどうなのか、皆さんご自身の目で確かめてみてください。ご紹介するのは18世紀初頭、フランス人のルイ・ルナールにより出版された世界最古の彩色海洋動物図鑑、通称モルッカ諸島産彩色魚類図譜。モルッカ諸島彩色魚類図譜は出版から300年近くが経過し、現存するのは不完全本も含めてわずかに60部ほどの貴重な図譜です。魚類を中心に460図が収められ、当時としては他に類を見ない情報量でした。また、重要なところは生きている状態の動物を描いていることです。当時はカラー写真もなく、実物の標本もヨーロッパに持ち込まれる頃にはすっかり変色していました。そのため、生きていた時の色彩情報は大変貴重です。
この図版は実物をアレンジした幻想的な仕上がりで、正確さに欠けています。それでも博物学的な価値を認められているのは、細部に描かれた実物の特徴から、一定のレベルで同定が可能なためです。

出典 www.umi.muse-tokai.jp