池田コレクション展 ～池田文夫氏のこころ、ここに集う～

「美術品を蒐集する」活動は洋の東西を問わず古代より先例がみられ、日本においても正倉院御物や東山御物に代表されるように、人びとのいとなみの中で盛んに行われてきました。また近代以降、特に美術品においては数寄者と呼ばれる実業家たちがその担い手となって、数多くの作品を蒐集しています。そのため現在、各地に所在する美術館の中には、それら実業家たちのコレクションが母体となっているところも多くみられます。

　当館が開館するきっかけとなったのも、実業家が蒐集したコレクションの寄附でした。その人物こそ、今回の展覧会名にもなっている池田文夫氏（1907～87）なのです。池田氏は明治40年七尾市生まれ。紡績を志して岐阜県大垣市で和興紡績株式会社を設立、中部地方きっての経済人として活躍します。大垣市の産業発展に大いに帰依する一方で、故郷七尾市にも数々の貢献を行い、七尾市名誉市民にも推挙されました。

　その池田氏が生涯を掛けて取り組んだのが美術品の蒐集で、若い頃より日本・東洋・西洋など幅広い範囲で、数多くの品々を求めました。そして昭和63年（1988）、蒐集美術品のうち125点の美術品が七尾市に寄附され「池田コレクション」と命名、平成７年に開館した当館の中核所蔵品に位置付けられます。コレクションは開館後も追加寄附が行われて内容が拡充、現在合計204点となっています。

　その内容は池田氏が活躍した岐阜県美濃地方ゆかりの陶磁器や近現代絵画、肉筆浮世絵、そして漆器「根来」など、実に多彩なラインナップといえます。各作品の、それぞれにきちんと整えられた収納箱や梱包道具、１字１字精魂込めて書かれた箱書や添書などをみるにつけ、美術品を心より愛し、終始優しい眼差しで見続けてきた氏の姿を思い描くことができることでしょう。

　本展ではその「池田コレクション」より、工芸や絵画・彫刻など幅広いジャンルで計50点を紹介します。作品それぞれに込められた、池田氏の「こころ」をぜひ感じ取ってください。

出典 nanao-art-museum.jp